本作の魅力は、ストーリーのダイナミズムに加え、主人公たちの人物造詣の深さにあります。世の中の役に立つことを夢見て警察官となった新人交番巡査、新田真人。妻子を地方に残し、東京で単身勤務する製薬会社の平凡なMR、友永孝。かつては腕利きと評判を得たものの、今や年金と国選弁護で糊口をしのぐ老弁護士、五味陣介。年代も立場も違う、もともと接点のない三人が、仕組まれた痴漢事件という奇妙な縁で出会い、その罠の裏に隠された深い闇に闘いを挑んでいくのです。友永は留置場、拘置所で無罪を訴え続け、新田は警察組織の軋轢や圧力に抗い、また五味は荒んだ生活による病気を抱えながら法廷で闘争。組織や社会からどこかはみ出しながら...